体重制限は本当にある?
馬は走るために生まれて来たと言われているほどバランスが良い筋肉を備えた足腰があるのはもちろんのこと、馬車のための馬なら重量のある荷物を運ぶことができるなど極めて屈強な身体を持っているイメージがあることから、どんな重さにも耐えられると思ってしまいがちです。
しかし、馬の健全性を保ったり、移動や荷物の運搬などの目的を果たすために、一定の体重制限が設けられています。
競馬の場合は競技の公平性からハンデが設定され、鞍や騎手の合計体重が制限されることがあります。
一方、個人が趣味で行うような乗馬の場合は競馬ほどの厳密ではないものの、馬の体重のおおよそ30%程度の体重に制限するのが良いとされています。
ただし、これはあくまでも目安であり、馬の性質によってベストな値が変化することがあります。
また、個人の趣味であっても競技会などに参加する場合には、より体重が軽い方が高いパフォーマンスを発揮できます。
これらの事情からも分かるように、乗馬に制限体重が存在することが理解できます。
馬は人間と同様の生き物であることから、乗馬をする際には人馬一体となって尊敬の念を持って接し、制限体重を踏まえて馬への負担を考慮するのが大切です。
体重制限の目安は何キロ?
馬の体重制限には特に決まりはなく、競馬の厩舎や調教師の方針、乗馬クラブのルールなどによって異なります。
これまでその馬を担当してきた厩務員や調教師の判断や、同種の血統を持つ馬の傾向などから、おおよその体重制限が決まります。
一般的には最大で馬の体重の30%とされていますが、競馬や馬術大会向けの馬の場合は最大で10%とすることで、競技での結果を残すことを目指します。
体重制限は馬ごとに違う
具体的な数値で見てみると、乗馬で使われる馬の多くは体重が400kgから500kg程度ですが、この場合、趣味の乗馬であれば120kgから150kg程度、競馬などの競技の場合は40kgから50kgとなります。
さらに競馬の場合は騎手の体重だけではなく、鞍などの馬具や、騎手が身に着けるヘルメット、ブーツなども重量に含まれます。
多くの騎手は厳しい減量に耐えながらも鍛錬して、理想の体重を保ち続ける過酷な競技に挑んでいます。
一方、趣味の乗馬の場合は0.1秒を争う訳ではないことから、高度なスピード感が求められることはなく、最大で150kg程度の方でも楽しむことができます。
ゆったりと歩を進めるのであれば馬にとって十分耐えられる重量で、安心して乗ることが可能です。
馬の種類で体重制限は変わる?
馬には競馬で活躍するようなサラブレッドもいれば、農耕馬や馬車馬など重量のある荷物を運ぶような重種と呼ばれている馬も存在しています。
これらの種類によって特性や体重に違いがあることから、当然体重制限も変わります。
サラブレットは走るために品種改良が繰り返され、体重を絞ってスピードを出すことから、平均体重は400kgから500kg程度です。
一方、重種の場合はスピードよりもパワーが求められることからサラブレッドと比較し太い脚を持ち、体重も800kgに達することがあります。
競技でパフォーマンスを発揮するためのサラブレッドの体重制限は10%程度であり、競技に参加しない重種は30%が目安です。
これに照らし合わせると、800kgの重種の場合の体重制限は240kgとなります。
単純に試算すると、体重80kgの人間が3人乗っても大丈夫という計算になります。
現実には鞍などの馬具をはじめ、けん引する馬車やトロッコ、積載する荷物の重量などが加味されます。
もちろんこれらの体重制限はあくまでも目安であり、それぞれの個体が持つ特性や個性も踏まえる必要があります。
馬の中には愛玩用に改良されたポニーがいますが、こちらは乗馬には向かず体重制限そのものが存在しません。
体重制限の目安を超えるとどうなる?
馬の体重に対して、競技用の場合は10%以内、趣味の乗馬などでは最大で30%以内の体重制限にするのが理想ですが、それらの数値を超えると様々な弊害が生じることがあります。
この体重制限は乗馬する人間の体重に加えて、乗馬用品や馬具、ヘルメット、ブーツなども含んだ重さです。
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20%を超えたあたりから負担が顕著に表れ始め、競技ではスピードを出してタイムを稼ぐのは厳しく、乗馬の場合でもゆったりとした移動が求められます。
25%を超えたあたりから馬の呼吸や心拍数が上がり、明らかな疲労が見え始めます。
さらに30%を超えてくると、今度は脚や背中を痛めてしまう原因になります。
一見すると軽度な負担であっても、長時間にわたって乗馬を継続すれば負担が蓄積し、最後は怪我を負うなど深刻なダメージを与えてしまいかねません。
これらの状況を回避して馬の健康を守るためにも、多くの厩舎や乗馬クラブでは体重制限を設けています。
これらの目安は大人のためのものですが、お子様が乗馬する場合には身長や年齢などを考慮して、安全性を高めるためにより厳しい基準を設けている場合があります。
インストラクターの力量や経験、対応状況などによっても細かな変化があることもあります。
馬への愛情と配慮も大事
大半の馬は厳しい調教によって鍛え抜かれた肉体を持っており、人間1人は余裕で載せられるだけの身体の強さを誇っていますが、より長く活躍してもらうためには健康に配慮することが大切です。
いくら強い馬であっても体重制限を大きく超えたり、長時間にわたって活動すればおのずと限界を迎えて、怪我を負うなど最悪の事態も考えられます。
馬をいたわりながら乗馬を楽しむためにも、平均的なサラブレッドの400kgから500kgの体重に対して10%程度の体重制限の場合、40kgから50kgを超える体重のある方の場合は、馬の健康や安心安全な乗馬をする目的からもダイエットをするのを検討するのもおすすめです。
大半の乗馬クラブでは最大で80kg程度、インストラクターが手綱を引いてゆったりと歩く引き馬の場合は90kg程度まで対応しており、大半の方は特に気にせず乗馬をエンジョイすることが可能です。
まとめ
馬の背に乗り移動する楽しみを与えてもらった時には、体重制限が存在することを思い出して、自身を支えてくれる馬に感謝の気持ちを抱き続けたいものです。人馬一体となって鼓動や体温を感じることができたなら、馬と心が通じ合い、様々な希望を叶えてくれます。